Sunday 28 October 2012

映画の中のカナダ


2012年10月22日。俳優のラッセル・ミーンズ氏の死亡が報じられました。

名前を聞いてもピンと来ないかたが多いと思いますが、映画『ラスト・オブ・モヒカン』でモヒカン族の酋長役を務めた男性と言うと、分かりやすいかもしれません。

このニュースを聞いた家主が、ひさしぶりに『ラスト・オブ・モヒカン』が見たくなったというので、一緒に鑑賞することにしました。

「この映画は、カナダの自然をとても美しく描いているのよ。」
と家主。何度か見たことがある映画だったのに、舞台はアメリカだと思っていました。

さて、どんな話しだったかな?

映画が始まって数分したころ、登場人物のイギリス兵がモヒカン族の村でスピーチをするシーンがありました。

「オタワのアベナキ族はフランス軍につき、我らイギリス軍に戦いを挑んでくる。」

あら、アベナキ族って言ったよね?

私の家主は、北米の先住民族のひとつであるアベナキ族の二世なんです。「オタワ」と「アベナキ族」という言葉を聞いて親しみが湧き、ストーリーにグッと引込まれてしまいました。

時代は1757年、北米の領地を巡って、フランス軍とイギリス軍が戦争をしたころ。

このころは、アメリカもカナダもまだ誕生してません。ざっくりと言えば、現在のアメリカあたりにイギリス人が、カナダのケベック州あたりにフランス人が暮らしていました。それぞれが領地拡大を狙って、戦争をすることになりました。周囲に住んでいた先住民族も、どちらかの軍について戦います。

映画が半分ほど進んだあたりで、フランス軍とイギリス軍が取引をします。フランス軍に降伏したイギリス軍が戦地・フォート ヘンリー(カナダのオンタリオ州キングストン市)を出る間、フランス軍は攻撃をしない、と。

その取引のシーンに映し出された旗に、また驚きました。フランス軍の旗には、現在のケベック州の州旗にもあるユリの花が描かれていました。フランス国旗でも、ケベックの州旗でもない、この旗。

ニューフランスの旗かしら?」
ニューフランスと言うのは、フランス人が現在のカナダのケベック州とオンタリオ州あたりに作った領地の名前です。

そして物語は、愛の物語に変わっていきます。

イギリス軍を率いる将軍とその娘たち、そして兵士たちが旅の途中に襲われ、娘たちが捕虜となり、フランス軍についた別の部族の村に連れていかれます。モヒカン族の兄弟とその父親(ラッセル・ミーンズ氏)が、彼女たちを助けに部族の村に乗り込みます。ここで部族の酋長に向かって、モヒカン族の兄が語りかけるのですが、英語を話す兄の言葉を、英語を理解しない酋長のためにフランス語に訳す声が聞こえます。

アベナキ族の二世である家主の母語は、フランス語です。かつてのニューフランスに居住した先住民族の中には、英語を話さない人たちも多かったのでしょう。

静寂でどこまでも平坦な森や、青々とした平野、壮大な滝。登場人物たちがカナダの自然の中を駆け巡ります。

この映画は、モヒカン族として育った白人男性とイギリス将軍の娘の恋を描いたフィクションです。しかし、カナダに暮らして間もない私にとっては、カナダの歴史を教えてくれる映画となりました。

カナダのバイリンガリズムについては、「バイリンガルの町、オタワ」で。

2 comments:

  1. 名前だけ聞くとほんと分からないけど、あの人か!
    映画の詳しい内容はもう覚えてないけど、この人は印象に残ってます。亡くなられたんですね…
    私も久しぶりにまた、見てみようかな?

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    1. この俳優さんは、ネイティブインディアンの活動家でもあったらしいですよ〜。

      実際に自分が住んでいる州の話しだったんで、私はとても興味を引かれました。ぜひ、見てみて!

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